ごあいさつ
言葉の発達と訓練
1.ことばの発達
ことばには大事な3つの側面があります。
話しことば(音声言語):「りんご」と声に出して言うこと
理解できることば(内言語、概念):『りんご』について知っていること
やりとり(コミュニケーション):『りんご』について伝えたい気持ち
ことばの発達の順番
話しことばが出てくるまでには少し時間がかかります。
分かる事柄が増え、理解できることばが増え、その後やっと話せることばが出てくる
ことばの発達に必要なこと
話せるまでには、体全体の発達、認知すること、遊びの拡がりなどの成長がとても大事になります。
- 生まれたばかりの赤ちゃん:泣くことで母親の注意を引きつける
- 生後2~3ヶ月:母親の顔や口元を観察したり、あやされると笑うようになる
- 生後6カ月頃:「アーウ、ウーア」と人に呼び掛けるような発声や「バババ」のような音の繰り返しの喃語が出る
- 生後9カ月頃:人の動きや声を真似したり、指さしをしたりする
- 1歳前半:意味のあることばを言うようになる(1つのことばであらゆるものをさしたり、状況に応じて用いたりする 例:「ブーブ」と言って『車』『飛行機』『電車』など乗り物をさす)
- 1歳半頃:「これなに?」というように、物の名前を尋ねることが増え、話せることばが急激に増える
- 2歳頃:話せることばをつなぎ合わせて、表現できるようになる
- 3歳~4歳:話せることばの数が増え、話せる長さも長くなり、文法や助詞も少しずつ使えるようになる
- 5歳~6歳:相手や状況に合わせて話しことばを用いるようになる
言葉の発達と訓練
2.構音(発音)の発達
「構音」(発音)とは、ことばの音を作り出すことです。
構音の発達の順番
構音の発達には、ある程度の順序性があります。【表1】 体の成長や脳の発達とともに、簡単な構音からより複雑な構音ができるようになります。
【表1】 構音の完成年齢
年齢 | 完成する構音 |
---|---|
2歳代 | パ行、バ行、マ行、ヤヨユワン、母音 |
3歳代 | タ行、ダ行、ナ行、ガ行、チャ行 |
4歳代 | カ行、ハ行 |
5歳代 | サ行、ザ行、ラ行 |
構音の発達の特徴
- ことばの最初や最後だけしか言わない(音を覚えておくことや、音を作り出す力が未熟だから)
例:『りんご』を「ご」と言う - 1つずつの音は言えるのに、単語になるとうまく言えない
(音を聞き分けることが難しく、まとまって聞いてしまっているから)
(素早く唇や舌を動かして、目的の音を作ることができないから)
例:「パ」だけなら言えるが、「パパ」になると「パア」となる - よく言い間違えることばがある
(前後の音に影響されて、目的の音をつくることができず、言いやすい音で発音してしまうから)
例:「メガネ」を「メアネ」や「メガゲ」と言う
構音の発達に良いこと
- たくさん体を動かす
- 食べ物は、よく噛んで食べる
- 吹く遊びをして、口から息を出すことを覚える
- 唇や舌を動かした遊びをする
- ペロペロなめることで、舌先を動かす
- うがいをする
言葉の発達と訓練
3.構音障害について
構音障害とは:構音(発音)に異常をきたした状態のことです。 こどもの場合、年齢から考えて構音できるであろう音を誤って構音してしまっている、又は聞き手が不自然に感じる構音状態のことをいいます。(目的の音を作り出せない状態)
- 「器質的(構音器官の形態や運動に支障がある)」ものと、「機能的(器質的な原因が明らかではない)」ものに分類されます。
口蓋裂や粘膜下口蓋裂、あるいは鼻咽腔閉鎖不全症が原因で起こる構音障害は、「器質的構音障害」と言われます。
誤り音の種類
構音練習の対象になる誤り
- 一般的な誤り(置換、省略、歪み):発達段階にもみられる誤り
- 異常構音(声門破裂音、口蓋化構音、鼻咽腔構音、側音化構音):構音操作の異常によって起こる誤りで、日本語にはない構音あるいは音となる
誤り方の状態 | 誤り方の例 | |
---|---|---|
置換 | 目的の音とは違った別の音に置き換わった状態 | 「パンダ」の「ダ」が「ナ」に置き換わり「パンナ」となる |
省略 | 音が抜け落ちてしまった状態 | 「サカナ」の「サ」の子音が抜け落ち「アカナ」となる |
歪み | 日本語の音として聞き取れない歪んだ音の状態 | |
声門破裂音 | 母音を強く発声したように聞こえる | |
口蓋化構音 | 「タ」は「カ」に、「サ」は「ヒャ」や「シャ」に近い音に聞こえる | |
鼻咽腔構音 | クンクン言っているように聞こえる | |
側音化構音 | 「シ」は「ヒ」に、「チ」は「キ」に近い音に聞こえる |
構音練習の対象とならない誤り
- 音形の誤り:音としては構音できるが、単語になると前後の音に影響されて、音を誤ってしまう状態
例:「バナナ」を「マナナ」、「コップ」を「ポップ」と誤る
言葉の発達と訓練
4.言語療法ー当センターにおけることばの練習ー
言語療法とは・・・
ことば(構音)の評価,練習を行うところです。
言語聴覚士(Speech Therapist:ST)という専門職が練習を担当します。
構音が不明瞭な場合は練習を行う方もいます。
言語療法の時期
一般的には3歳から発音のチェックを行います。
それは、多くの日本語の音を獲得する時期であり、ことばも多くなってくる時期だからです。
0~2歳頃 | 3歳~就学 | 6歳~ | 10歳頃~ | |
---|---|---|---|---|
形成外科(手術) | 口唇・口蓋手術 | (二次手術) | 顎裂部の骨移植 | |
矯正歯科 | 歯列・咬合管理 矯正治療 |
|||
言語療法 | 発音評価・練習 |
言語療法を必要な方は就学前に構音の練習を集中的に行う方が多いですが、5、6歳以降にも治療の様子を見ながら、長期的にフォローしていきます。
言語療法の内容
1.言語聴覚士の視点
ことばのリハビリテーションを担当する言語聴覚士の診かたを紹介します。
口や舌の動きが適切にできているか
年齢相応の音がきちんと構音できているか
異常構音(日本語にない音)の発音がないか
鼻から息が漏れていないか
将来的に異常構音の出現がないかどうか(予防)
2.評価の具体的な方法
口や舌の動き→実際に動かしてもらいます。
- 音の評価→絵カードやお話から音を聴いて評価します。
- 鼻漏れの評価→鼻息鏡(びそくきょう)という鏡を使います。
息をはいているとき、声を出しているとき
軟口蓋(=のどちんこ)がしっかり挙がっているかどうかを診ます。
評価用絵カード
※鼻から息が漏れていると・・・
- フガフガした声で発音がはっきりしない(=開鼻声)
- 日本語にない音(異常構音)が発音されることがある
練習内容
ことばの練習内容はそのお子さんの症状に合わせて様々ですが、その一部を紹介します
口や舌の運動→平らな舌を出す練習
「さしすせそ」の風を出す練習
平らになった舌に、息を通すストローを加えて風を出す練習をします。
- ご家庭でできること、生活の中での練習そのお子さんのことばや口・舌の状態にあわせて、ご家庭でできることの伝達をします。
(例)・食事:しっかり口を閉じる,噛んで食べる
口のまわりについたものを舌で舐める練習 など。
・歯磨き:ガラガラうがいの練習
口をしっかり閉じて「ぺっ!」と吐く練習 など
・遊び:シャボン玉、ピロピロ、ラッパなど吹くおもちゃ