過去の研究会
第4回研究会プログラム
日時 | 2001.3.3(土曜)午後3時より |
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会場 | 於:長野県立こども病院北棟第二会議室 (新築された北棟の2階です。第1、3回の開催場所とは異なります) |
プログラム
開会 | 15:00 開会 代表世話人:信州大学医学部形成外科学教室 松尾 清 |
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特別講演 | 15:10~16:10 信州大学医学部耳鼻咽喉科学教室教授 宇佐美 真一先生 小児の難聴 (1)聴覚の発達 (2)聴覚検査 (3)難聴の原因ー遺伝子変異などを含め (4)とくに口蓋裂に伴う難聴に関して 司会:信州大学形成外科 松尾 清 |
総会 | 16:10~16:20 |
休憩 | 16:20~16:40 |
一般演題 | 16:40~17:40 座長:長野県立こども病院形成外科 野口 昌彦 |
1.ことばの相談室における口蓋裂患者の実態
岡崎ことばの相談室 岡崎 恵子
あいがせ矯正歯科 鮎瀬 節子
口蓋裂の治療はチームアプローチが必要であることは、現在は、自明のこととなっているが、ことばの相談室を訪れた患者をみていると、まだ十分にその意義が理解されているとはいえないことを痛感する。今回は、相談室で扱った口蓋裂患者の中で来室までの経過に問題があったと思われる症例について、その問題点を指摘したい。
第1は口蓋裂の手術を受けてはいるが、術後の鼻咽腔閉鎖機能や言語の経過観察がされていなかったり、必要な処置がとられていなかった症例があったことである。第2は、粘膜下口蓋裂の症例で、診断が適切に行われなかったり、未手術のまま放置されていた症例があったことである。
口蓋裂患者を扱う場合は、術者とSTの協力が必要であること、粘膜下口蓋裂の病態について医師やST、保健婦などに啓蒙をしていく必要があることを提言したい。
2.長野県立こども病院における口蓋裂関連疾患に対する言語治療の実際
長野県立こども病院言語療法科 栗井由美、大池 清朗
長野県身障者リハビリセンター言語療法室 古川 博
信州大学医学部形成外科学教室 近藤 昭二
1999年から2000年の2年間に、口蓋裂関連疾患で長野県立こども病院の言語療法室を訪れた症例について、年齢、性別、原疾患、精神運動発達遅滞の有無、合併する他の疾患、異常構音、言語訓練内容について分析した。こども病院の特殊性により、精神運動発達に問題を有する症例や、多臓器にわたる問題を抱えた症例が多く見られた。こども病院のように特殊な環境の言語治療室では、口蓋裂に対する専門性を高めた治療を行うと同時に、関連診療科との連携を高めたり、個々の症例が抱えている問題を包括的に処理していくことが肝要と考えられた。
3.Pushback-Furlow法と粘膜移植Furlow変法の言語成績比較
信州大学医学部形成外科学教室 近藤 昭二、杠 俊介
長野県立こども病院形成外科 野口 昌彦、滝 建志
長野県立こども病院言語療法科 大池 清朗、栗井 由美
1994年から1999年の4年間に同一術者が行った口蓋裂手術について、従来行っていたPushback-Furlow法(PF法)と現在行っている粘膜移植Furlow変法(粘F法)を比較した。両者の術式の決定的な違いは、口蓋にraw surfaceを残すか残さないかであるが、言語成績にも差を生じた。
4.パーソナルコンピュータを用いた音声分析:第1報
信州大学医学部形成外科 ○菊池 二郎、近藤 昭二、松尾 清
口蓋裂児の言語訓練においては、合併する聴力、語音弁別力、精神発達、患児の年齢などの問題で、聴覚によるフィードバックが十分行えず、言語療法に苦慮することがある。パーソナルコンピュータを用いて、音声を視覚的に表現し、視覚からのフィードバックによる言語治療を目的とするソフトの開発を試みている。今回は母音発声時を例にとり、音声の視覚表現による治療の可能性について報告する。
鼻咽腔閉鎖機能、口蓋化構音、側音化構音の診断が可能なP-F法21例、粘-F法39例を対象に検討を行った。鼻咽腔閉鎖機能に関しては4段階で評価した。1:正常(VPC)、2:聴覚印象は正常だが軽度の鼻漏出を伴う(BVPC)、3:軽度の聴覚印象の異常を伴う(BVPI)、4:2次手術を必要とする(VPI)、と分類した。口蓋化構音、側音化構音に関しては軽度であっても検出された場合、すべて陽性とカウントした。
鼻咽腔閉鎖機能に関してはP-F法21例中、BVPC:1例、BVPI:4例VPI:1例計6例に異常を認めたのに対して、粘F法39例中、BVPC:5例、BVPI:1例VPI:1例計8例であった。異常構音に関してはP-F法21例中、口蓋化:9例、側音化5例を認めたのに対して、粘F法39例中、口蓋化:8例、側音化0例であった。
以上より、粘膜移植Furlow変法は顎成長だけでなく、言語成績においても従来法に比較してよい結果をもたらすものと考えられた。