過去の研究会
第1回研究会プログラム
日時 | 1998.1.31(土曜)午後2時より |
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会場 | 於:長野県立こども病院大会議室 |
プログラム
開会 | 14:00 開会 代表世話人:信州大学医学部形成外科 松尾 清 挨拶 長野県立こども病院院長 川勝岳夫先生 |
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特別講演 | 14:05~15:00 岡崎ことばの教室、上智大学講師 岡崎恵子先生 「口蓋裂の言語治療」 司会: 松本歯科大学口腔外科第二講座 古澤清文 |
休憩 | 15:00~15:10 |
総会 | 15:10~15:20 |
事例ならびに症例検討会 | 15:20~17:00 |
1.ことばの教室担当者の口蓋裂児の構音指導に関する実態
上田市立北小学校ことばの教室 万年 康男
小学校ことばの教室は、通級制度が整備途上で、担当教員の資質や研修制度も未整備です。口蓋裂児の通級が激減する中、指導技術の向上も困難です。そこで、長野県ことばの教室担当者が、口蓋裂児の指導をする際の鼻咽腔閉鎖機能と構音指導に関する知識・技術の実態を報告いたしますので、ご指導頂ければ幸いです。
2.気管切開を受けているTreacher-Collins症候群の1例
JA長野厚生連北信総合病院リハビリテーション科 原田千恵子
2歳9ヶ月になるTreacher-Collins症候群の女児を報告する。有意味語は増加してきているが、構音の分化は認められていない。今後の構音指導上の配慮、形成外科的予後についてご検討いただきたい。
症例経過呈示 こども病院形成外科 野口昌彦
3.8歳の硬軟口蓋裂術後の女児に対する構音指導について
上田市立南小学校ことばの教室 鎌倉克仁
サ行の口蓋化構音を治すために、息の摩擦音を強くする練習を行ない、1音1音の発音はかなり改善された。日常会話への般化をどの様なプログラムで行ったらよいか。
症例経過呈示 こども病院形成外科 近藤昭二
4.口蓋裂患児2例の症例検討
長野赤十字病院言語科 吉原悦子
[ ケースA ] 男児、CA 9:0 両側性唇顎口蓋裂
反対咬合+、口唇の変形+、瘻孔+、軽度難聴。
問題点:異常な舌癖、口唇の運動制限、反対咬合および歯列の異常。
・/ s /の構えがつくれない。/ t /が後方化しやすい。
[ ケースB ] 女児、CA 5:0 不全口蓋裂
問題点:訓練場面ではほぼ正常構音を獲得したが、free talkで/ k /の声門破裂音化が顕著。
・鼻咽腔閉鎖機能不良が問題なのでしょうか。
5.4歳8ヶ月の唇顎口蓋裂男児の構音指導について
国保浅間病院リハビリテーション科 磯貝佳子
症例S.N. 男性。4歳3カ月時、こども病院より紹介されたケースで閉鎖床を使用すればBlowing時の鼻漏出なし。
当院での初回検査時は[ N, d, dz, dz, ts, t∫]が口蓋化構音が認められ、[ t ]は声門破裂音、[ h, r ]に子音部の省略が見られた。[ s ]は[∫]で可能であった。[s, t∫]は安定し、/dz, dz /は訓練していないが[ s ]の安定とともに可となり、/ N /も舌出しで可であるが、時に口蓋化する
現在の問題として、/ d /の無声音化から声門破裂音である/ t /を促したいのだが、舌出しの/ d /は舌と上唇が触れてしまい[ b ]になってしまう。
[ tsω] + 母音だと近い音は出るのだが、現在はこの音で安定させていいのだろうか?また、[ b / d ]はどの様に訓練すればよいのか?
ご指導いただきたく、よろしくお願いします。上歯の歯列もかなりの問題があるお子さんのようにみえます。
症例経過呈示 こども病院形成外科 近藤昭二
6.学習障害を伴うBorderline VPIの言語訓練の可能性と限界について
長野県立こども病院リハビリテーション科 古川 博
症例N.H.、10歳4ヶ月、男児。Velo-Cardio-Facial症候群によるVPIと学習障害を認めた。WISC-RはVIQ / PIQ : FIQ = 74 / 77 : 77であった。神経学的にはソフトニューロサインの異常と、語音弁別力の低下を認めた。術前術後の長期に渡る構音訓練を試みたので、経過に考察を加え報告する。
訓練課題は、高度のVPIを認めた術前から、MFT(筋機能療法)を口型訓練、呈舌訓練時に実施し、舌と歯間にストローを挟んで呼気を出す練習を行った。狭義の構音訓練は、舌出し母音、閉鼻状態での母音練習、/ k /, /η/、 / k /, /η/が安定してくると、/ t /, /θ/、続いて/ m /, / r /、単語、文レベルへと訓練を進めた。
Morrisの分類では、現在の鼻咽腔閉鎖機能は境界域の鼻咽腔閉鎖不全に該当し、軽度の鼻咽腔閉鎖不全と、鼻音化した音声が課題間や課題内で一貫して認めらる。従来、このような症例に対する言語療法は、効果が著明でない場合、構音訓練を長期間続けるべきでないとされているが、この症例では構音訓練を継続して行うことで改善傾向が認められた。
7.VPIを伴う片側性軟口蓋形成不全の2例の治療について
長野県立こども病院形成外科 近藤 昭二
鼻咽腔閉鎖不全を伴う片側性軟口蓋形成不全の2症例について、鼻咽腔閉鎖不全の治療経過と、構音の問題について報告する。
術前鼻咽腔閉鎖不全による軽度の子音の歪みと、呈舌の障害によると考えられる口蓋化、側音化構音を有し、特に[s]で著明であった。一方、奥舌音[k]の破裂音は両症例とも鼻漏出無く、子音の歪みもなかった。手術により鼻咽腔閉鎖不全が改善すると呈舌も改善し、[s]も改善傾向が見られた。一般の口蓋裂の鼻咽腔閉鎖不全による構音障害とは異なり、鼻咽腔閉鎖における舌の関与などが構音に影響していると推察されたので報告する。